なぜ「要件定義」が崩壊の始まりになるのか

多くの炎上プロジェクトは、
開発後半ではなく、要件定義の段階ですでに崩れ始めています。

しかし当事者はそれに気づきません。

なぜなら要件定義は、
「順調に進んでいるように見える工程」だからです。

  • 会議もしている
  • ドキュメントも作っている
  • 合意も取っている

それでも、崩壊は静かに始まっています。


要件定義で本当に起きていること

多くの現場で起きているのは、
“要望の整理”であって、“要件の定義”ではないという現象です。

顧客や事業側の声を集め、

  • これも必要
  • あれも欲しい
  • 将来的にはこうしたい

それを資料にまとめる。

一見、正しいプロセスに見えます。

しかし、本来の要件定義は違います。

「何をやらないか」を決める工程

です。

ここが曖昧なまま進むと、
後工程で必ず歪みが生まれます。


崩壊が始まる3つのポイント

1. 目的が抽象的なまま進む

典型例:

  • 「ユーザー体験を向上させたい」
  • 「業務を効率化したい」
  • 「競争力を強化したい」

間違ってはいません。

しかし抽象的な目的は、
無限に解釈可能です。

その結果、

  • スコープが膨張する
  • 優先順位が揺れる
  • 意思決定がブレる

要件定義の最初にやるべきことは、

このプロジェクトが“成功”と言える状態は何か?

を定義することです。

これがないまま仕様に入ると、
プロジェクトは必ず迷走します。


2. 前提条件が言語化されていない

多くの要件定義書には、機能一覧はあります。

しかし、

  • 技術制約
  • 予算制約
  • スケジュール制約
  • 組織的制約

が明文化されていないことが多い。

結果として、

「そんな前提は聞いていない」 「それは想定外だった」

という衝突が起きます。

要件とは、
機能 + 制約条件 です。

制約を書かない要件定義は、
設計図のない建築と同じです。


3. 決定構造が曖昧

要件定義中によく聞く言葉があります。

  • 「一旦これでいきましょう」
  • 「仮で置いておきます」
  • 「後で調整しましょう」

仮置きが多いプロジェクトは、
ほぼ確実に後半で爆発します。

問題は仮置きそのものではありません。

問題は、

その仮置きの責任者と見直しタイミングが定義されていないこと

です。

決定構造が曖昧なまま開発に入ると、
仕様変更が連鎖的に発生します。


なぜPMは止められないのか?

多くのPMは、違和感を覚えています。

  • 目的がふわっとしている
  • 制約が整理されていない
  • 合意が曖昧

それでも止められない。

理由は主に3つです。

  1. 早く開発に入りたいという圧力
  2. 上位者の意向への遠慮
  3. 技術的制約への理解不足

しかしここで立ち止まれないと、
後で何倍ものコストを払うことになります。


要件定義を崩壊させないために

高度な手法は不要です。

最低限、以下を明文化するだけでよい。

1. 成功定義(Success Criteria)

  • 数値で測れるか?
  • 誰が評価するのか?

2. スコープの外側

  • 今回やらないことは何か?

3. 制約条件一覧

  • 技術
  • 予算
  • スケジュール
  • 組織

4. 意思決定ルール

  • 誰が最終決定者か?
  • 変更時のプロセスは?

これが揃って初めて、
要件定義は「完了」と言えます。


本質的な問題

要件定義が崩壊する本当の理由は、

曖昧さを放置したまま前に進んでしまうこと

です。

曖昧さは楽です。
対立も起きません。

しかし曖昧さは、
必ず後工程でコストとして返ってきます。


最後に

炎上は、設計ミスではありません。

ほとんどの場合、

要件定義の曖昧さが時間差で爆発した結果

です。

もし今、

  • 要件定義に不安がある
  • 合意形成に違和感がある
  • 開発前なのにモヤモヤしている

そんな状態なら、一度立ち止まり、
構造を整理する価値があります。

プロジェクトを守る最大の防御は、
「早く作ること」ではなく
「正しく決めること」 です。

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